タイヤ虫
観光道路の山道。休日は観光客の車が多い。平日はサイクリスト、バイクライダー、そしてぶっ飛ばしドライバー、ウォーカー、ウォッチャーなどがいる。
今の時期4月から7月にかけては、鳥たちの繁殖期である。ツグミ、ウグイス、キジ、スズメ、カラス、トンビその他なんでもいる里山だそうだ。
山道だからコンターを使った道路であり、曲がり角が多い。谷を登れば百メートルでもぐるっと迂回する。そこが、ライダーにはいいのだろうか。
曲がり角に黒い2、3センチのものがうごめいている。それがタイヤ虫だとは、はじめは、きづかなかった。何か変な虫がいるなと思っていた。なかなか正体には辿りつかない。推察力のない下手な探偵だ。物証を手にとってみればいいのだが、マムシもいるし、カエルもいる。道路にはいろんな虫の潰された遺骸が残っている。長いものだと数年残っているような感じだ。でもたいていのものは季節の天候の変化で消滅し、きれいに跡形もなくなる。
そういう中にずいぶん消えないものがある。ひとつはマムシの潰された皮であろうか。銀色に光ってすでに道路の舗装の一部になっている。なぜわかるのか。交通事故にあったマムシたちを見ているからである。形が崩れてくるのだが、それは爬虫類の皮がバッグやバンドに使われていることを想えば、理解できることだ。
もうひとつわけのわからないもの。その正体は車のゴムタイヤの破片だった。丸くなって、たぶんノートの上のケシゴムのカスのような製造過程でできあがったものだろう。コーナーでタイヤが擦られてキュンと曲がった形ではげ落ちるのだろう。だから、タイヤ虫だ。
このタイヤ虫の正体を見破るには半年かかった。これがタイヤのゴムだというのは、ほぼ毎日同じところを歩いているウォーカーたちは、例のマムシの皮と同じように、みんな知っている。道路って面白い。あるいても車でも毎日みていると、そこにあるものが毎日目に入ってくる。車では、すぐにどこに何があるかが、頭に浮かぶ。あそこは子供が飛び出してきたところ、その次の角は小さな穴ぼこがある・・・。そんな注意するべきことがすべてわかる。タイヤ虫は、そのうち砂利とともに流される。でも山道ドライバーは愛好者が多い。山頂のパークにはそういういろいろな人たちの交流の場でもある。タイヤ虫はヒトの作ったものだ。消しゴムのかすと同じだ。摩擦すればそこで剥離する。それで、円滑な安全走行を確保してくれているのだ。
タイヤ虫はどんな道路にもあるだろう。とくに曲がり角の吹きだまりには、砂利たちとともにまぎれている。もっと、だれかに気づいてもらいたいのだと私は想う。そのうちタイヤ虫への感謝祭が、メーカーから企画されるという話・・・、はまだ聞いていない。みんな知らないのだ・・・。
« すみか | トップページ | TQCとハーバード流交渉術 »
「趣味」カテゴリの記事
- 趣味とは取り柄だろうか(2018.11.19)
- 履歴書がかけない(2018.11.09)
- 趣味はなに・・・(2018.10.16)
- 緊急事態に備える・・・(2018.07.13)
- 趣味なし(2018.07.09)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント